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"Red Book"な夜

今日もブログにお越しくださってありがとうございます。

今晩はとても有意義な晩でした。同じブロックに住むオーリー夫妻と心理学者・精神科医のユングにまつわるイベントに幾つか参加しました。

今日はユングの大変に個人的な本, "Red Book (NY Timesの記事)"についてご紹介します。


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Red Book (amazonのページ)




ユング心理学は日本では河合隼雄さんの影響もあって大変有名ですよね。でもここアメリカではマイナーなんです。カルト的でアカデミック(学術的)ではないと見なされているふしが強いですね。私も大学院でユングについては学びましたが、表面を引っかく程度でした。フロイトから派生した英国対象関係論というのを主に勉強しました。対象関係論で言っていることがアートセラピーの現場で起きていることをとても良く説明していたのですね。でも、ユングが大切にしているシンボルの持つ意味をきちんと理解することも実はアートセラピストにはとても重要なことなのです。

ユングは毎日曼荼羅を始めとして、様々な絵を描いていました。これはあまり公にはなっていませんが、実はユングは彼自身が精神的破綻を経験し、Madnessと言われる状態に陥りました。本来なら病院に入るべき状態だったとも聞きます。ところが、彼はそんな状態であっても正気の部分も持ち合わせ、絵を描き続けることでその状態から自分を脱させることを可能にしたのです。

その彼の精神的なジャーナルがこのRed Bookと呼ばれるものなんです。大変大きな本です。ユングは絵を描くことに関してフォーマルなトレーニングは受けていません。自分で描きながら学んでいきました。素晴らしい絵が沢山あり、彼の優れた技巧が伺えます。彼はシャーマンのごとく人類の持つ集合無意識にアクセスすることができたのでしょう。彼の絵にはまるでナバホ族を思わせるようなイメージが沢山あります。彼は自分のこの精神活動をアクティブ・イマジネーションと呼び、そのアクティビティの最中(おそらく瞑想に近いもの)に、浮かんだイメージを絵にして表し、そこに現れたシンボルの意味を紐解くことをしてゆき、自分の精神に起きていることを理解してゆきました。

このRed Bookはユングの死後、彼の遺族によってずっと封印されてきました。なぜならその絵がユングの精神的混乱を良く表していて、それを世間に公表することをずっと躊躇われていたからです。しかし、その遺族をソヌ・シャムダサーニ博士が10年以上に渡って説得し続け、こうして今月公開となったんです。ユング研究所では、彼の臨床手法について学ぶことができますが、これまでどうしてユングがその手法を身に着けたのかは明らかにされていませんでした。なので学んでもどこか片手落ちであった部分があったようです。ところがこの『赤の書』が公開されたことで、これまで疑問とされていたものが明らかにされてゆきます。これはこれからの精神医療に取ってとても大きいことだろうと思います。

現在の精神医療は投薬に頼っている部分が非常に大きいのです。ところが、ユングは薬に頼ることなく、Madnessから開放されたわけです。その秘密がこの本に隠されているんですね。

現在、NYのRubin Museum of Artで実物の『赤の書』が公開されています。今日見てきましたが、規模は小さいのですが、内容には圧倒されるものがありますね。また後日ゆっくりと訪れたいと思います。来年の1月25日まで公開中。一見の価値ありです。

ちなみにこの『赤の書』の第一刷は売り切れ。私は入荷待ち状態ですが、いつ次の刷が入荷するかは当分未定だそう。これは家宝になると思っている私です。


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by sakurasikibu | 2009-10-10 23:57 | 文化活動