嘘?と妄想と先入観

今日もブログにお越しくださってありがとうございます。

自分の見ている世界は所詮のところ自分が認識したものでしかないのだなあ、と実感させられることがあった。

今日、職場で昨日入院してきたバングラディッシュ出身の77歳の女性の初回面接をした。
25年前にアメリカに移住してきた彼女だが英語は全く話せないので、通訳を介しての3者間電話(電話でならありとあらゆる言語の通訳の助けを借りられる仕組みがある)で執り行われた。
面接の前に彼女は過去4回被害妄想が強くて入院したことがあること、家族が自分のお金を盗むと思い込んでいることなどを朝の会議のレポートで聞かされていた。全く言葉が通じないので、どの程度彼女の頭がクリアなのかも検討がつかず、年齢的に多少の痴呆が始まり、被害妄想も強くなったのだろうか、と思っていた。

面接開始当初は通訳を介してもなかなか彼女がこちらの質問を解さないので、やはり多少の痴呆が関係しているのかな、と思っていた。でも面接が進んで家族状況の話を始めると彼女はまだまだ頭脳明晰だと分かる。そうして、嫁との確執を話してくれる。よほど辛いようで、面接中に泣き出す彼女。
だんなさんに先立たれた彼女は、ヒンズー教のしきたりによって、未亡人向けの食事(そういうものが存在するそうだ!)を取らなければいけないのに、それを妨げられたり、政府から支給される月800ドルの年金も根こそぎ取られ、お菓子を買う自由もないそうだ。通訳に当たった人も彼らのコミュニティーでは弱い老人の年金を横取りすることは良くあることだそうで、この老女にすっかり彼女は同情していた。

精神科にやってくる被害妄想の強い人は大体において周囲の人間皆にたして、非常に懐疑的だ。自分の身に起きること全てを疑って掛る。ところがこの可愛らしい老女は至って純真な部分があり、私や他のスタッフのことを簡単に信用する。どうやら、嫁にだけ強い被害妄想を持っているようだ。特定人物にだけ、妄想を抱き、他では全く無邪気というケースは少ない。

本当のところはまだ分からない。家族面接をして、詳しく調査する必要が出てきた。病棟の精神科医も別途彼女と面接をして、私の印象に賛同している。

この場合、彼女の家族が嘘を付いて扱いの面倒になった老女を病院に送り込んだ可能性もあるし、やっぱり全くの彼女の妄想であるかもしれないし、その場合はちょっと特殊な被害妄想をもつケースだ。

面接の際は予め大まかな情報を手にしている方が深く突っ込んだ質問ができるので、可能な限りそうしているけれど、その情報はやっぱり一つの情報でしかない、とちゃんと理解しないといけないな、としみじみ思った。先入観を持ってしまうと、自分の目の前にある事実にフィルターが掛って、そのままを受け取れない。
良い勉強になった。ありのままに受け入れる、って言葉の上では簡単だけど、本当のところは難しいね。自分が常に中庸でいられるようにするのも「今ここ」にいないとできないことなのだなあ、と。

何が真実かも、本当は分からないと思う。
一つの事象について、色んな側面から各々が感じたように、認知したように語っているだけだから。
私はただこの可愛らしい老女(本人が若い頃は本当に美人だったと言うくらい現在も美しい)に自由と心の平和が訪れてくれたら良いなあ、と思う。


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by sakurasikibu | 2009-02-26 12:19 | 仕事場で感じたこと