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Malingering

今日もブログにお越しくださってありがとうございます。

近頃はマスタークレンズ関係の話題が続いていたので久しぶりに職場の話など。
Malingeringとは詐病、つまり仮病を使うこと。

この言葉は成人と働くようになってから覚えた言葉。というのも、詐病を使う人がいるからだ。
本当に世の中には色んな人がいる。
私の働く入院閉鎖病棟にくる患者さんは皆Psychiatric Emargency Room(精神科救急医療室)を経由してやってくる。PERで皆一応の精神鑑定を受け、必要と見なされた人が入院病棟にやってくる。そのPERで水戸黄門の葵の御紋のような働きをする台詞がある。「私は自殺願望があります」という台詞。これを言ってしまうと大概は入院の運びとなる。万が一、入院治療をせずにその人が本当に自殺をしてしまうと、入院させなかった病院側に責任がある、とされることがあるからだ。

で、この仕組みを熟知し、利用してやろうと目論んで入院してくる人が実は結構沢山いるのだ。実際は精神科の入院治療を全く必要としない人がまるで立役者のような演技力を発揮し、社会福祉を悪利用しにくるのだ。健康保険もない、仕事もない、家もない、おまけにアルコール依存症であったりするのが一番良くあるパターンだ。NY市立病院は規則として退院後のアフターケアを私立病院よりずっと手厚く用意してからでないと患者さんを退院させられない。ホームレスの人の場合は例外を除いては住む場所を確保してあげなければいけないのだ。で、これはそんなに簡単にできることではなくて、アルコールやドラックの依存症のある人は受け入れてくれる先が限られてくるので下手な場合は3ヶ月以上、治療の必要のない人がずっと場所待ちで入院していたりする。そうやって待っている間に健康保険を含めた生活保護を受け取る手続きをし、住む先もさんざん選り好みしてとんでもなく素晴らしいところに暮らすようになって出て行く人もいる。もちろん全て善良な市民の税金によって成り立っている。

この立役者の彼らは本当に非常に演技というか嘘が上手で、一人の悲劇の主役の完璧なストーリーを作り上げてやってくる。少し前にはこういう人がいた。
5年前に家族全員を交通事故で亡くして、それ以来何もやる気が起きない。ずっと鬱に見舞われたまま。もう僕はもう死ぬしかない、というような話を作り上げてくる。セラピスト達は毎日のように個人セッションをし、彼らに真剣にセラピーをしている。役者の彼らはずっとその人物になりきって話を続けるわけ。だけれど、ふとしたところから、例えばその役者の兄弟などから、そんな話はありえない。彼には別居中の妻も子供もいる、なんてことが分かったりする。

今日の立役者はロシア出身のおじさん。やってきた当初は治療が極めて困難な慢性の鬱病患者さんで、長期入院専門の州立病院と短期入院をずっと繰り返している人ということだった(実際にこれは本当なんだけれど)。もちろん自殺願望もあって。まあ、どれだけこちらが真剣に治療をしてもいつもこの世の終わりのような非常に重く暗い顔をしている。どんな薬もまず効かない。そりゃそうだよね、もともと鬱じゃないんだから。このおじさんも入院中に政府から生活保護を受けられるようになった。そうしたら、途端に今日、今までの話は全部でっち上げ、と言い出した。今まで鬱でもなければ自殺願望があったわけでもなく、ずーっと”Fine"だったと。嘘を言い続けて、病院の入退院を繰り返していただけだと。

こうやって専門家の治療の時間と病棟のベッドを必要のない人が占拠している間、本当に助けの必要な人が病棟に来れないのだ。これが一番の問題。そしてこの不況のせいか、こういう役者さんたちがなんと病棟の半分くらいを占拠していることに、今日職場のスタッフ全員が多大なる憤りを感じて、しばらく皆で話し合っていた。PERで何とかこういう人たちをちゃんと見極めて入院させないようにしないと本当に助けが必要な人たちがもっと困ることになってしまう、と。

こういう現象を見るのも私/職場の同僚の集合意識の表れなんだよなあ、と思うとなんとも言えない気分でもある。こういう人たちをただ受け止め、抵抗しないでいるともう見なくなるのかねえ。う~む・・・。



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by sakurasikibu | 2009-04-14 01:22 | 仕事場で感じたこと