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Mostly Martha

今日もブログにお越しくださってありがとうございます。

またまた古い映画のご紹介。
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今回は2001に制作されたドイツ映画、"Mostly Martha(日本語版タイトルは『マーサの幸せレシピ』)"
アメリカでの劇場公開は2002年でした。ドイツ人の友人BBと観に行ったのを覚えています。映画の舞台はドイツのベルリンに次ぐ大きな都市ハンブルクです。運河が多く、その運河に架かっている橋はヴェネチアより多いそう。とても美しい街で皆が憧れる街らしい。この映画には運河は映るけれど、ハンブルクに橋が多いことなんて全く分からぬまま物語は進行して行く。映画のシーンの大部分はレストランのキッチンか、主人公マータ(ドイツ語ではマータと発音している)の台所だから。

劇場で見終わった直後にDVDになったら絶対にまた観たい、と思っていたこの映画。
今回見てもやっぱり、良いなあと思いました。

ワーカホリックのシェフのマータは料理人としての腕は天才的だけれど、人付き合いがどうも上手くできない。レストランで分からず屋な注文を出す客相手につい口論を始めてしまう彼女。外交的手腕はゼロに等しいマータはレストランのオーナーにセラピーに送り出されてしまう。そこでも料理の話しかしない。休日も友人と遊びに出かけることもなく、レシピのことを考えている。そんなマータが事情あって姪っ子のリナを引き取ることになり、そこからドタバタが始まり、彼女の人生に沢山の変化が起きてくる。

マータのことを職人気質と言ってしまえば、聞こえは良いけれど、シェフとしてのプライドがレストランのお客を真に喜ばせることより、自分の料理の完成度の方を優先させてしまう辺りはマータの自我の表れでもあり、人間としての未熟なところ。でも、ここが彼女の魅力でもある。レアのステーキを注文するお客が「もっとレアに焼け」と二度目のやし直しを言ってきたとき、「これ以上どうやってレアに焼けというのか」と怒ったマータは生肉をつかんで、そのお客のテーブルの上にどんっ!と乗せてしまう辺りは天晴れだ。そしてそのままそのレストランを辞めてしまう激情さ加減も、ある意味爽快さを伴う。

几帳面なマータの前に能天気なイタリア人シェフ、マリオ(しかし、能天気な人物がイタリア出身っていうのも随分ステレオタイプな人物設定だと思うけど。名前もマリオって単純過ぎないかなあ・・)も登場し、彼女の価値観を変えてゆく。


こういう人間の日常の機微を描く映画が一番好きだ。物語を自分の身近なものとして捉えられるからだろうか。この映画の派手な見せ場と言えばレストランのキッチンで作られる美味しそうなお料理くらいなものだろうか。地味な映画だ。地味ながらも、私にはもう一つたまらなく好きなものがこの映画にはある。シンプルで美しいフォルムのドイツ家具が沢山出てくる。建築物の内装も良い。マータのアパートや、彼女のセラピストのオフィスなど、とても美しいと思う。

話はちょっと脱線してしまったけれど、この映画を観終えて、このマータという女性はとってもチャーミングだな、と思った。容姿も整って、シェフとしての才能があっても、感情表現が上手く出来なくて世渡りが全く下手。でも、そこが良いんだろうなあ、と。「完璧」じゃないところ、そこが人間としての魅力であり味である、と改めて思わせてくれたこの映画。

私なんぞは自分の人間としての未熟さ加減にときに凹んでみたり、少しでも精神的に成熟した人間になりたいと思ってしまうのだけれど、この映画を観て安心した。この自分のいたらないところが私の人間としての面白さなんだろうな、と。やっぱり「このまんま」で良いんだなあ、とほっとしたのである。


この映画のハリウッド版のリメイクがキャサリン・ゼタ・ジョーンズ主演の「幸せのレシピ」だそうで。こっちは観とりませんが。


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by sakurasikibu | 2009-08-27 20:46 | 映画