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ま、いっかの日本人社会

昨日、NYの日本領事館で主催された精神科医、野田文隆氏の講演会に参加する。
"日本人の疾病感とサイコロジカルマインド”という題目であった。
正直期待して行かなかったのだが、意外や意外、実に面白い講演会だった。

野田氏は以前カナダで研修医をされていた経験があり、北米と日本の文化の差に触れながら、日本人の精神病に対する態度、そしてその治療、死生観などが主な内容であった。野田氏の触れる文化の差は私も常に感じていることなので、興味を引かれたのだと思う。野田氏曰く、北米人は自分の抱えている問題の核心が分かっていて、それを明確に表現して、治療を求めてくる。しかし日本人は問題について遠心的に回った後、ようやく核心に入ってくる。要は回りくどい、というわけだ。私など、母と話しをしていると、”で、肝心の問題は何なのよ、はっきり言ってよ、”とつい言ってしまいたくなるけれど、それは日本人特有の話し方なんだなあ、と改めて思う。

日本文化は西洋からみると何とも曖昧ではっきりしない。コミニュケーションもそうである。夫婦間ではそれが顕著だと野田氏は言う。ちょっと前までは、"飯、風呂”で夫婦は理解しあえていたのだと。北米人と結婚した日本人は相手方がしょっちゅう愛情を確認していないと不安になるのが次第にうっとうしくなるし、何でも話し合いで解決しようとすることに疲れてしまう人が多くて、やっぱり離婚となってしまうことも多々あるらしい。日本人は暗黙のうちに何となく相手のことを理解できる何かを持っていると。言葉以外でコミニュケーションを図ることが上手いのだと。大切なのはcommunicationではなくてcollaboration(共同作業)なのだ、と野田氏は言う。そして日本人はそれができるので、一見ファジーな文化だけれど、実はMature(成熟した)文化なのだと。私もそう思う。日本人は寛大なんだと思う。白黒ハッキリさせなくても、グレーのまま相手を受け止めてあげられるのだと思う。

10年来の友人Gと以前にこんな会話をしたことがある。
”日本人は何でも、’ま、いっか’で済ませちゃうからね”と。それは別に日本人が好い加減なわけじゃなくて懐が広いから曖昧なままでも受け入れちゃえるんだと思う。良い文化だなと思う。

日本を離れて10年近く経つけれど、近頃本当に日本文化は良いなあと思うようになった。野田氏も若い頃は欧米文化に憧れて、日本もそうあるべきと思われていたそうだ。精神医療のあり方も含めて。でも、今は日本は日本で良い、と。そうあるべきだと思うそうである。私も全く同感なのだ。残念なことは多分、一部の人(含、政治家)が欧米に幻想に近い憧れを持ち、日本をどんどん”なんちゃって欧米”にしていること。教育制度、司法制度、都市開発など。日本は日本風にやっていけば良いのに。そうしてなんちゃって欧米化をすることで日本人が持っている大事な寛容さを失ってきているように思えてならない。残念だなあ、とすごく思う。近い将来日本に帰るつもりでいるけれど、日本人らしさを取り戻すことに力を注ぎたいな、と思う。

by sakurasikibu | 2006-03-16 20:55