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嬉しい瞬間

セラピストとして嬉しい瞬間はクライエントが生き生きと人生を送っている姿を見るときだ。

今日、1年ほど前に私の病棟に入院していた20代前半の女性と病院内で偶然出くわした。入院当初の彼女はかなり重度の統合失調症を患っていた。酔っ払ったオヤジのようにふらふらとしてきちんと歩くこともままならない状態だった。たびたび床に転がって這うようなこともあったし、口からはよだれをたらしている状態。自分のことをジェニファー・ロペスと思い込み、双子をお腹に宿していると信じ込んでいた彼女。
投薬をしてもすぐに症状の改善は見られず、治療チームの辛抱強い治療が続いた。
しばらくして彼女の症状に改善が見え始め、そこからはかなり早いペースで回復してゆき、退院後は6週間の集中通院プログラムに参加していた。

今日会った彼女は顔立ちこそ同じだが、まるで別人のように光り輝いていた。聡明で美しいとても魅力的な女性が私の目の前に立っていた。思い出せば、確か10代の頃は奨学金を受けるほど優秀な生徒だった彼女。話をすれば、何と今では私の病院で事務の仕事をしているそうだ。彼女のような病気を持つ人の社会復帰はなかなか困難で、社会に出ても大概はボランティア的な仕事につくことがほとんどだ。多くの人はアドバイス通りに治療を続けず、入退院を繰り返す。
でもこの彼女の今の表情からは、過去の病状はとても想像が付かない。真面目に治療を続けているのだろう。
私の病棟のスタッフに今でもとても感謝していて、今度挨拶に来ると言っていた。みんな彼女の生き生きとした姿を見て大喜びするに違いない。

彼女の姿を見て、また自分も頑張っていこうと思うのだった。

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by sakurasikibu | 2009-01-29 21:32 | 仕事場で感じたこと

生まれ違えば・・・

私は総合病院の精神科に勤務している。以前は思春期の子供達と働いていたが現在は成人と働いている。閉鎖入院病棟なので、一般社会では危険な精神状態の人がやってくる。重度の鬱、極度の不安、自殺願望、肥大化した被害妄想、幻聴・幻覚により自・他者に危害を加える危険のある人などなど、日常生活がままならない人がやってくる。短期治療を目的としていて、ある程度症状が落ち着くと各々のコミュニティーに戻ってもらい、そこで通院治療を続けてもらうことが原則である。短期治療では回復の見込みの薄い人は州立病院へ転送し、長期治療となる。私の病院はQueens区にあり、NYでも他民族性の特別に強い地域である。世界地図の縮小版と言っても良いくらい。

月曜日に自殺願望でやってきた20代前半の好青年はバングラディッシュ出身。就学率の低いかの国でサイエンスで学士を持つ優秀な青年だ。入院前は大学生相手にサイエンスの家庭教師をしていたほどだ。
Queensの彼のコミュニティーに2年ほど住んでいて、半年前にお見合いで結婚をした。が、性生活を期待されたようにできず、自分をだますことができず、切羽詰ってやってきた。
彼はゲイなのだ。NY州では同性愛者の婚姻はまだ認められていないが内縁の関係は認められているし、性的嗜好で差別を受けることは表立ってはない。差別するほうがいけないと常識的に受け止められている。実際、私の同僚にも数え切れないほどの同性愛者がいて、結婚式も他州でしている。恥じることなど何もない、という風潮だ。
ところが、この青年の生まれたバングラディッシュでは大罪に匹敵する。この青年の夫婦生活の破綻から彼の嗜好が明らかになり、彼はコミュニティから締め出されてしまった。自国の彼の家族はもし彼を迎え入れるなら、殺すとまで脅され、連絡すら出来ないという。
彼の国の文化は家族の絆が何より大切で、それを失うことはアイデンティティーすら失うほどとてもとても大きなこと。本国に戻れないことはもとより、Queensにある彼のコミュニティーにももう戻れない。
家族はいるのに天涯孤独状態の彼。違法滞在をしているので、仕事をコミュニティー以外で見つけることも簡単ではない。
自国のお父さんは色んな人から責められイスラム過激派からも息子が帰ってきたら殺すと脅され、心労がたたって入院したと伝え聞いた彼は罪悪感で一杯だ。
彼と同じ嗜好を持っていても表向きは結婚を保ち、脇で愛人を持つ人も多いだろうに、自分に正直でいる彼の勇気は天晴れと思う。

生まれた土地が違うとこんなにも歩む人生の障害は異なるのかと感慨深い気持ちになる。
人間の尊厳、自由を社会の通念に捕らわれずに彼が模索し、本来の自分自身でいることに心から安心、幸せを覚える日が来ることを願う。



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by sakurasikibu | 2009-01-27 20:02 | 仕事場で感じたこと

旧暦の年明けに

随分と久しぶりのブログ。
まめでない性格に重ねて諸々の事情ですっかり遠のいてしまっていた。
私個人の興味が随分と変わり、何だか同じブログでそれらについて触れていくことに躊躇いを感じたことが一番の理由だろうか。
本人ですら存在を忘れかけていたブログだが・・・。
昨年末に3年ぶりに日本に一時帰国をすると、友人知人の数人からブログを再開したら、というお声を頂く。
遠く離れて住む私の様子をブログを通して見てくれていたそうだ。なんともありがたい。
NYに戻ってすぐに投稿しようかと思ったが、ついつい延びて今日になる。
旧暦ではお正月のおめでたい日だし、新月のときに何か新しいことを始めるのも良さそうだと思い、今日からまたぼちぼちしたペースで気の向くままに何か書いていこうと思う。
近頃は世の中のいろんな歪みに目が行くことが多くて、そんなことも書いていこうかなと。


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by sakurasikibu | 2009-01-26 23:33 | つれづれ